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【第5回】11月17日開催記録


 2023年11月17日(金)に、第5回研究会がパーソルキャリア株式会社様の大手町オフィスで開催されました。


1)人的資本情報開示の現在地 開示の国際的枠組みの視点から

パーソル総合研究所 研究員 今井昭仁様


 はじめに、日本よりも先行する海外のサステナビリティ開示の枠組みについてお話しいただきました。もともと環境分野(TCFD、TNFD)が先行し、その後TISFDが社会分野の枠組み策定を進めるなか、2023年6月にはISSBがS1(サステナビリティ一般)とS2(気候関連情報)を公表。今後2年間のISSBのプロジェクトへの意見募集では、「生物多様性」「人的資本」「人権」「報告における統合」のなかでも「報告における統合」に意見が多く集まっているそうです。

 

 一方、日本ではサステナビリティ情報開示の4つの枠組み「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」のうち、「戦略」と「指標及び目標」の有価証券報告書への記載が義務化されました(2023年3月期決算から)。これは国際的には特異な情報開示の形であり、投資家が求める「資本コストの低減」に関する「ガバナンス」と「戦略」が省かれたことが弱点と言えるとのことです。実際に開示内容は企業ごとに対応が分かれており、講演のなかでは、企業の記載状況についても紹介されました。

 

 開示すべき情報として求められるのは「企業固有の情報」とのことです。講演後のグループディスカッションでは、各社様の開示情報について、枠組みをもとに話し合われました。なかでも商工中金様の「人財バランスシート」は、多くのグループで注目されていたようです。






2)“HC(人的資本経営)とESG経営の接続”の試行錯誤 ~中計前後の“X”の変遷~

学研ホールディングス エグゼクティブディレクター 渡辺悟様


 ESG経営と連動した人的資本経営を進める、学研様の事例をご紹介いただきました。2019年から学研グループのDX推進を担っている渡辺様は、守りのデジタルから攻めのデジタルへの変革を推進されてきました。その中で、人事のあり方の変容が肝要であることに気づき、そこから人事の組織改革に関与。関係者との対話を重ねながら、あえてご自身も外圧と位置づけ、新たに戦略人事チームの別動隊を立ち上げました。それまでの労務人事チームと新たな戦略人事チームとの両輪による人事体制のもとで、人的資本経営が推進されるような変化を創出されました。


 さらに、グループ全体のサステナビリティ推進(ESG経営)においても、人的資本(ESGのS)の領域を人事チームがイニシアチブをもってリードすることをコミット。サステナビリティ推進(ESG経営)チームと人事チームとの役割分担を明確にしつつも、共創での推進体制を始動させたそうです。今後の課題は、企業価値向上に寄与する人的資本のKGI・KPIの設定とPDCAサイクル確立とのこと。なお新たな人事戦略も含めた今後のグループ戦略については、ご講演の翌週、中期計画「Gakken2025」にて公開されました。





3)ダイバーシティ&インクルージョン(D&I) ジェンダーの視点

Lazard Japan Asset Management 運用部 シニアヴァイスプレジデント お茶の水女子大学 ジェンダードイノベーション研究所 研究員 福田智美様


 日経統合報告書アワードの審査員でもある福田様から、投資家視点での適切な情報開示についてお話しいただきました。なかでもD&Iは機関投資家からも企業からも重要視され、議決権行使助言会社大手のISSは「女性取締役が不在の場合、経営トップの取締役選任議案に反対投票を推奨」としているそうです。


 一方で、日本企業の現状もご紹介いただきました。2023年6月末時点で、東証に上場する企業のうち23.9%は女性取締役(社内・社外)が不在なのだそうです。また、女性活躍推進に優れた企業として選定される「なでしこ銘柄」の企業価値推移の分析や、優れた開示として双日様の事例をご紹介いただきました。なかでも政府や東証が掲げる「2030年までに女性管理職比率を30%に」に関しては、単に管理職比率だけでなくパイプラインを開示している点や、女性のライフイベントを考慮した上でのチャレンジ機会を示している点が際立っているとのことです。統合報告書の計量テキスト分析でも、社長の発言から「人材戦略」全体として「女性が活躍できる企業」を目指す方向性が示されました。


 ご講演全体を通して、D&Iの重点項目は開示だけでなく、価値創造ストーリーと融合することや、人的資本全体を包括して考えることが重要とのメッセージをいただきました。



 次回、第6回は12月6日(水)に開催予定です。トピックは以下3本です。お楽しみに!

1. 人工知能技術の活用によるサステナビリティ情報の開示に向けた示唆

2. 事例発表:ポーラ様「幸せなチームが結果を出す」

3. 各社の取り組み発表(これまでに発表していない企業様)

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