「人的資本経営研究コンソーシアム」の第4回研究会が2024年9月2日(月)に慶應義塾大学三田キャンパスにて開催されました。
1)「経営戦略と人材戦略の連動」実践事例〜ポリシーにもとづく事業・人材ポートフォリオ
パーソル総合研究所 上席主任研究員 佐々木 聡様
昨年度の研究会から大きなテーマとなっている「経営戦略と人材戦略の連動」について、本研究会の座長でもあるパーソル総合研究所の佐々木様よりお話ししていただきました。
人的資本経営の一丁目一番地である「経営戦略と人材戦略の連動」ですが、多くの企業において実現できていないことを教えていただきました。ここでいう人材戦略とは、「人材マネジメントポリシーに根ざした事業ポートフォリオと人材ポートフォリオ」のことで、「人材ポートフォリオ」とは、企業が事業戦略を達成するために、どのような特性を有した人材が、どのタイミングで、どの程度必要になるかを予測し分析したものです。また、「人材マネジメントポリシー」とは、人事が人材戦略を考えていく上で拠り所になる考え方のことで、独自性が高く、競争優位な人材戦略を生みだすものです。
実際に人材マネジメントポリシーを活用した人事戦略を取っている企業の事例として、リクルートやトヨタ自動車についてご紹介いただきました。どちらもまさに人材マネジメントポリシーに沿った人事施策を行っている点が明確で、理解が深まりました。さらに、一から人材マネジメントポリシーを策定し、経営戦略と人材戦略の連動に取組んでいる企業の具体的な事例についても教えていただきました。多岐にわたる施策をうちながらも、最も重要視したのは役員合宿の実施であり、合宿のメインは人事ポリシーを作ることだったそうです。それほどに経営にとって人材戦略が大事になってきているということだと思います。
最後は、自社の人材マネジメントポリシーを考えるにあたっての育成と異動配置について、As-Is(現状)とTo-Be(将来)の5W1H判定を参加者のみなさまに実施していただきました。そして、その結果をもってグループごとにディスカッションをしていただきました。
2)人的資本経営のコスト・ベネフィット? ~人事の現場から見える景色~
日清食品ホールディングス執行役員・CHRO 正木 茂様
続いて、研究会の参加企業様の1社、日清食品の正木様よりご講演いただきました。正木様は財務・経理ご出身でありながら、人事の経験も豊富でいらっしゃるという貴重なバックグラウンドをお持ちの方で、「人的資本経営のコスト・ベネフィット」についてお話ししていただきました。
お金のなる木をいくらで買うか?というオークションから始まり、会社の財務的な価値のお話しとなり、その企業価値を図で示していただきながら、財務情報の限界・非財務情報に求められていることについてお話ししていただきました。財務のバックグラウンドをお持ちの正木様ならではの、財務×人事のお話しは非常に分かりやすかったです。
全体を通して、日清食品様ならではのお取組みを紹介していただきながら、人事としての悩みやジレンマ、難しさを多数シェアしていただき、お話しを聞いている人事のみなさまは大いに共感されている様子でした。会社として今は苦しくても、将来のための人材配置・育成を行っていくことの意義を何度もお話しされていたことも印象的でした。そして、そこでポイントになるのはアンラーニング。今の事業において優秀な人材に、これまでの常識にとらわれずに新しいことを学んでもらう必要があります。正木様は「まずは人事自らアンラーニング」ということで、立教大学大学院で経営学専攻リーダーシップ開発コースを修了されたそうです。素晴らしいことですね。
日清食品様のクリエイティブを大切にした独自のお取組みのご紹介もとても興味深かったです。無人島で火を起こしチキンラーメンを食べる研修は日清食品様ならではでした。そして、人材や能力の見える化も人事戦略にとって重要だという点も日清食品様のお取組みを通して教えていただきました。正木様、貴重なご講演、ありがとうございました。
最後に、保田先生が夏季集中講義で訪問したシリコンバレーの情報を写真と共に紹介してくれました。社員のクリエイティビティを引き出すような空間づくりを意識したGoogleやMetaの本社の写真はとても興味深かったです。こういった世界をリードする企業が人的資本への投資を惜しみなく行っていることが写真を通して理解できました。日本企業も負けていられないですね。
次回、第5回は10月24日(木)に開催予定です。企業文化やパーパスを取り上げます。
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