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【2024年度・第3回】7月25日開催記録

更新日:9月27日


 「人的資本経営研究コンソーシアム」の第3回研究会が2024年7月25日(木)に慶應義塾大学三田キャンパスにて開催されました。


1)リーダーシップ類型で人材の強みを生かすマネジメント

慶應義塾大学 総合政策学部准教授 吉井 弘和様


 慶應義塾大学の吉井先生から、まずは人材の市場環境についてお話ししていただきました。人手不足の状況拡大により売り手市場が拡大していることや、キャリア志向が強く、組織への忠誠心が低いという若者の価値観の変化から、組織には様々な課題が生じているという点について問題提起がありました。また、組織が活用する人材マネジメントシステムは、組織文化や労働法規制・社会文化との相互作用の中で形作られており、環境変化への適応が難しいという点も挙げていただきました。


 次に中央省庁における人材の現状として、就職希望者が減っていると同時に離職率が高まっており、質・量ともに人材の確保が困難な状況にあるという点に触れられました。働く人が成長を実感し、強みを発揮できるように、ツールやプロセスを工夫していくことが求められています。既にあるツールは、単一的な成長モデルになっている上に、凸凹を認めづらく、尺度が荒すぎるなどの課題があり実用的ではないとの指摘がありました。その上で、コンピテンシー(ある職務において優れた成果を創出する個人の能力や特性)を用いて、多様なリーダーシップスタイルを正面から認めるべく、中央省庁の課長補佐レベルに求められるコンピテンシーについて、Models of Leadership Competency(MoLC)を提案していただきました。また、「採用」、「育成、キャリア開発」、「配置」においてのMoLCの活用についてもご説明いただきました。


 お話しの後は、多様なリーダーシップスタイルやファクトベースの相互フィードバックについて、グループ内でディスカッションしていただきました。




2)大規模言語モデルと画像分析で統合報告書を読み解く

明治大学 理工学部 特任講師 崎濱 栄治様


 明治大学でデータ分析について教えながら、データ分析のコンサルティングなども手掛けられている崎濱様より、大規模言語モデルと画像分析を活用した統合報告書の分析結果について、お話ししていただきました。


 具体的には、統合報告書からテキストと画像を抜き出してデータ分析を行い、『日経統合報告書アワード2023』を受賞した統合報告書と受賞していない統合報告書を比較した結果を共有していただきました。画像分析はAmazon Rekognition APIで顔分析を行い、テキスト分析はGemini APIを使って評価をしたものだそうです。「こういうことを書いていると優秀賞が取れる」、「こういうこと書いていないと優秀賞を取れない」というのが分かると良いなという発想から行われた分析ということで、統合報告書を作成している研究会参加者のみなさまにとっても非常に興味深い結果を教えていただくことができました。


 まとめとして、顔分析と大規模言語モデルによる評価点を用いて、『日経統合報告書アワード2023』を一定程度再現できることが分かったとお話ししていただきました。日経統合報告書アワードの10の評価項目について、その評価理由と改善点まで提案してくれるのですが、評価理由が適切かどうか更なる検証が必要ということです。顔分析においては、Happy&Smail大事だということです。また、現状統合報告書に出てくるのは男性の数が圧倒的に多いので、女性画像を増やすこともポイントだそうです。




3)企業価値と従業員のウェルビーイング

公益財団法人 Well-being for Planet Earth 代表理事 石川 善樹


 長年親子二代にわたりWell-beingの研究をしてこられた石川様に、Well-beingの最近の国内外の動向についてお話ししていただきました。


 そもそもウェルビーイングとは何かというお話しから、国がウェルビーイングをどう捉えて、どのように政策に組み込んでいるのかについて、教えていただきました。昨年(令和5年)の骨太方針から、生活満足度という観点でウェルビーイングが成長の指標として明記され、今年度の骨太方針では、5つのビジョンの一つとして明記されるなど、年々その重要性が増しているとのことでした。国の方針を受け、地方自治体や企業でもWell-beingに関わる動きがでてきているようです。


 世界に目を向けてみると、S&P社のグローバルESG調査に基づく投資家向けインデックスであるDJSIが、2023年4月より調査項目に「従業員のウェルビーイング」を入れたことにより、各企業に対して、「従業員のウェルビーイングに関する情報開示」、「ウェルビーイングに向けた具体的な取り組み」が求められるようになったとのことです。また、米国において、ウェルビーイングに取り組む企業の業績が良いというデータもご紹介いただきました。


 SDGsの後、2030年以降の国際的な枠組みの構想についてもお聞きすることができ、今後一層世界がウェルビーイングを大事なアジェンダにしていくことが理解できました。そして、働くことそのものが人々のウェルビーイングに繋がるという点は、とても納得のいくお話しでした。


 企業価値に取り組むうえで、「従業員のウェルビーイング」は重要性を増していて、ウェルビーイングの定義自体も、「しあわせや豊かさ」といった概念から、「人間としての尊厳(みじめな 思いをしない)」へと根源的なものに進化しつつあるというテイクアウェイを石川さんからいただき、ウェルビーイングに対する理解が一層深まりました。




 研究会終了後には、三田キャンパス内のザ・カフェテリアにて、登壇者の石川さんを囲んでの懇親会を開催しました。石川さんからは、研究会の中では話しきれなかったお話しをたくさんしていただき、参加者のみなさまにとって大満足の懇親会となりました!



 次回、第4回は9月2日(月)に開催予定です。次回は、人的資本経営のコスト・ベネフィットや、経営戦略と人材戦略の連動という非常に大事なテーマを取り扱います。

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