「人的資本経営研究コンソーシアム」の第2回研究会が2024年6月18日(火)に慶應義塾大学三田キャンパスにて開催されました。
1)日米徹底比較、人的資本経営および人的資本経営ワークショップ
Unipos株式会社 代表取締役 ⽥中 弦様
日本企業の統合報告書をたくさん読んでいらっしゃることで有名な田中社長ですが、今回は日本に留まらずS&P500の人的資本開示を全部読んだ上で、日本企業との比較についてお話ししていただきました。エンゲージメント開示において、欧米は主語が「従業員」である一方、日本企業は主語が「会社」となっているという点は、特に興味深かったです。徹底的に従業員が主語になっているS&P500企業の開示から、日本企業が学ぶことは多そうです。
また、多数の海外企業の開示の事例や、ESGレポートの最高の目次についても紹介していただき、非常に参考になりました。
後半は、人的資本経営を実現する方法として、田中社長が開発された「人的資本経営ワークショップ」を体験させていただきました。自社の経営課題を挙げてその要因分析をした上で、グループの中で対話を行いました。時間の制約もあり、最初の部分のみの体験となりましたが、同じ悩みを抱える参加企業さん同士でのお話しが大変盛り上がりました。
2)パーソルの人的資本経営と開示のリアル
パーソルホールディングス グループ人事本部 本部長 大場 竜佳様
日本でまだ数少ない「人的資本レポート」を出されたパーソルホールディングスの大場様より、パーソルグループで取り組んでいる人的資本経営についてお話ししていただきました。
前半は、「パーソルの人的資本経営の取り組み」ということで、グループ内でのユニークな取り組みをご紹介いただきました。グループ経営に舵を切った2016年に策定した“ADVANCED HR SHOWCASE” という人事ポリシーの下に、グループ全社で守るルールを決めた上で、2026年の中計では「事業成長エンジン」の一つとして人的資本を明確に位置付けたそうです。社員のエンゲージメントを上げるために、エンゲージメントドライバーを定義し、領域を決めて取り組みを進めていらっしゃいます。具体的には、キャリアオーナーシップ施策の推進として、グループ内の他社への転職を後押しする取り組みなどがあるようです。
後半は、「パーソルの人的資本レポートの発行と反響」について教えていただきました。できたことだけではなく、できなかったことも対外的にも公表していこうという想いで人的資本レポートを発刊されたそうです。レポートのスタイルの決定方法や、苦労した点、投資家から評価された点など、これから人的資本レポートの作成を考えられている企業さんにとって非常に有意義なお話しでした。
3)人的資本情報と開示媒体
パーソル総合研究所 研究員 今井 昭仁様
今井様からは、人的資本情報について、どの媒体を通じて示すかについてお話ししていただきました。経済産業省が作成した資料によると、日本では各種開示媒体の記載内容に重複が見られるようです。他方、アメリカやイギリスでは各種開示媒体間の重複が少なくなっています。つまり日本は、さまざまな媒体を通した開示が特徴と言えるようです。
どんな情報を開示していくかにおいては、読者を想定することが必要です。研究会のお手伝いをしている慶応義塾大学4年生の学生さんたちや研究会参加メンバーの投資家の方々が、実際にレポートをどのように活用しているのか教えてくれました。幅広い読者層を想定するとレポートのボリュームはどんどん膨らみます。有価証券報告書、統合報告書、人的資本レポート等、媒体による書き分けが大事になってくるということでした。
今井様の講演が終わった後は、グループでのディスカッションを行いました。
そして、研究会終了後には、三田キャンパス内のファカルティクラブにて、懇親会を開催しました。参加者全員が30秒で自己紹介を行い、参加者の仲も深まったと思いますし、大変盛り上がりました!
次回、第3回は7月25日(木)に開催予定です。次回は、Well -being、People Analytics、リーダーシップ類型という幅広いテーマを取り扱います。お楽しみに!
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