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【第3回】9月14日開催記録


 2023年9月14日(木)に、第3回目の研究会が慶應義塾大学三田キャンパスにて開催されました。今回は、研究会の参画企業の日興アセットマネジメント様からもご講演いただきました。


1)コーポレートバリュー・アラインメント(経営戦略と組織)

「コーポレートバリューとは何か、それをどう活かすことができるか-組織の未来を先導するために-」

慶應義塾大学総合政策学部 琴坂将広准教授


 オックスフォード大学のアソシエイト・フェローでもあり、現在5社の社外取締役を務める琴坂先生をお迎えし、コーポレートバリューと組織との連携についてお話しいただきました。


 琴坂先生は、「コーポレートバリューとは、企業の根源的価値観を指す」と話します。コーポレートバリューを人的資本経営の出発点ととらえる琴坂先生は、まず「組織とは何か」を19世紀のナポレオンの戴冠式から説き起こし、資本主義や産業革命の変遷を踏まえ、「組織の未来に向けたコーポレートバリュー」を問いかけました。


「企業経営は、経営管理者の時代から先導者(リーダー)の時代へと変わりました。また第4次産業革命と言われるIoTやAIの進展がもたらす未来では、職場の同僚や顧客の多くがAIになる可能性があります。そうなったとき、経営者により求められるのは先導者としての役割です。そこで改めて問われるのが、人が働く組織の根源的価値観なのです」


そう話す琴坂先生からの3つの問いは、「自分が働く会社のコーポレートバリューが、『適切に言語化されているか』、『公式化は充分か』、『社内外で共創化されているか』」。各グループで、活発なディスカッションが行われました。


ディスカッション後の発表では、会社の規模や歴史、創業家やカリスマ経営者の影響、事業内容の変化などにより、各社のコーポレートバリューやその浸透が多様であることが確認されました。




2)人材投資関連指標と株主価値の関係性および株主価値向上に向けた取組

日興アセットマネジメント株式会社

インベストメント・テクノロジー運用部長 寺口 政行様

サステナブルインベストメント部 共同部長代行 小松 雅彦様


 人的資本経営の取り組みが株主価値にどう影響するのか、投資家たちはどこを見ているのか、気になるポイントをお話しいただきました。


 前半の寺口様からは、株価がどう決まるのかという理論にはじまり、投資家が着目する財務情報についての研究をご紹介いただきました。ESGの取り組みが優れた企業は学生や転職者、消費者や顧客企業からの評価が高く、将来の利益が増えやすいため必然的に株価が高まるとのことです。ESGのさまざまなテーマのなかでも、「気候変動」と「人的資本」は特に、ESGスコアと銘柄リターンとの関連が強いという分析結果もあるそうです。


 また、人的資本に関連して労働生産性の現状が示されました。日本の労働生産性はG7中最下位で、OECD加盟37カ国中26位です。労働生産性の引き上げに巧みな企業(=人材投資効率が高い企業)への投資が、ひいては日本経済の拡大にもつながると考えられるそうです。


 そういった魅力のある企業を、投資家が判断する尺度については3つのカギが紹介されました。さらに、日本株の約3割を外国人が保有することもあり、人的資本の情報開示が進む欧米を中心としたグローバル視点も考慮されるそうです。


 後半の小松様からは、長く続いたデフレからインフレ経済への転換や少子高齢化、設備投資の増加及び円安によるインバウンド増加といった要因からくる労働市場の売り手市場化を踏まえ、「人的資本のマネジメントの巧拙が企業の持続的成長を左右する」とお話しいただきました。


 そのために企業が取り組み、運用会社が後押しすべき課題については、「人的資本マネジメント」「事業戦略」「全社戦略」の3段階に分けて具体的に示されました。


 上記を踏まえたグループディスカッションでは、人的資本を高めるための取り組み、なかでも社員へのトレーニングや報酬がどう寄与するかについての関心が高かったようです。各社の事例や意見が多く交わされました。


 次回、第4回は10月20日(金)に開催予定です。トピックは「ハイブリッドワークと⼈的資本経営」「対外発信とコーポレートブランディング」の2本です。お楽しみに!


執筆者:水野 さちえ


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